ふと本棚に視線をやるとトルーマン・カポーティ作/村上春樹 訳の
『クリスマスの思い出』が目に飛び込んできた。
2月にクリスマスの話もないもんだと思うけれど、
なんとなく気になって、一気に読み返した。
これは60歳を越した女性のいとこと、7歳のバディーの物語。
クリスマスになると、ふたりは上等のウィスキーをはじめ、
サクランボ、シトロン、ジンジャー、バニラ、
ハワイ産パイナップルの缶詰、レイズン、クルミなどを買い込んで、
31個ものフルーツケーキを作る。
そしてお互いのために綺麗な凧をプレゼントし合い、
クリスマスの朝にはタップダンスを踊る。
(そのために家中の人たちが「殺してやりたい」
という目つきでふたりを見たとしても)
60歳と7歳の友情。
その関係がそう長く続かないことは、想像に難くない。
翌年からバディーは寄宿学校に入れられ、いとことは会えなくなり、
それから数年後、バディーは「それ」が起こったことを本能的に知る。
そして私はこの物語を読むたびに、
訳者の村上春樹が「この物語はイノセントストーリーと呼ぶしかない」
といった理由を体で感じるのだ。
ちなみに写真はコンビニで買ったフルーツケーキ。
物語のフルーツケーキとは、
味も香りもまったくの別物だとわかってはいるのだけど、
頭の中ではふたりがつくったフルーツケーキということにしている。